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伝えたいこと2007 Vol.05


自由であることの価値
森 正(准教授・政治・行政)
大学というのはきわめて自由な場所です。

たとえば、大学で何を学ぶか、各自で時間割を自由に設計することができます。ブッフェ形式のレストランのように自分の好きなお皿を自由に組み合わせて、好きなメニューを作り上げることができるのです。この総合政策学部では、身の周りや社会の抱える問題の解決策を考察するため、さまざまな学問を総合的に学ぶことができるカリキュラム構成になっており、自由に自分の学びたいことを選択できます。他の学部が専門店とすると、本学部は和食、洋食、中華…と多くの要素を取り入れたメニューが用意された『無国籍料理』といったところでしょうか。

勉強だけではありません。皆さんの学生生活すべてが、皆さんの自由な選択に委ねられています。スポーツに打ち込む、サークルに入る、趣味を究める、ボランティア活動を始める、資格取得を目指す、燃えるような恋をする…どれもいいでしょう。

しかし、この「自由」というのはクセ者でもあります。

大学は自由な場所だけに、自分の頭でよく考え、選択しなければならないことも、これまでとは違って圧倒的に増えてきます。自由に何をやってもいいよ、と言われても、かえって「何をやったらいいんだろうなぁ」と目的が見つからず、漠然とした不安を抱き、途方にくれてしまう人も少なくないようです。

一言アドバイスをさせてもらうなら、「学生時代にしかできないこと」に優先順位を置くべきだと思います。大学の図書館には一生かかっても読みきれないほどの本があります。卒業論文研究に打ち込み、事実を突き止めるというのもおそらく人生最初で最後のチャンスかもしれません。明日のスケジュールを気にせずに夜を徹して遊んでいられるのも、社会人になったらまず無理でしょう。逆に言うと、アルバイトもいいのですが、働くことは卒業後、いくらでも(嫌というほど)できる、とも言えます。

大学生活における「自由」は、当人たちが考えている以上に人生において貴重な資源なのです。しかも、大変不幸なことに(そして皮肉なことに)、その貴重さに気づくのは往々にして大学卒業後なのです。

森 正 (Tadashi Mori)

プロフィール

慶應義塾大学法学部政治学科卒業(1992年)、慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程単位取得満期退学(1998年)、愛知学院大学情報社会政策学部専任講師(1998年)、同助教授(2001年)を経て現職。日本政治学会、日本選挙学会、日本公共選択学会、日本マスコミュケーション学会、American Political Science Association、International Political Science Association 等に所属。

研究分野・専門分野

現代日本政治分析
現代日本における選挙と政治過程の実証分析