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伝えたいこと2013 Vol.01


日本の英語教育と言語習得
-グローバル・コミュニティの視点から-

竹田 真紀子
「英語を上達するにはどうしたらいいですか」と言って相談に来る学生は毎年何人もいます。彼らは、英語学習に前向きなのでアドバイスもしっかり聞きますし、本当にアドバイス通り実践した学生は確実に結果もでます。結果が出ると嬉しくなってさらにモチベーションもあがり、学習が順調に進みます。しかしその一方で、「英語が嫌いだ」「英語が苦手だ」という学生もたくさんいます。なぜ嫌いかと訪ねると、「難しい」「覚えることが多すぎる」「つまらない」という答えがよく返ってきます。またそのような学生は決まって、「海外で働きたくないし、日本の中にずっといたいから何も問題ない」と言います。

このような学生の答えを聞くと、大変に残念に思います。それまでの英語学習の経験の中でどれだけ苦しくて、大変な思いをし、失敗をしてきたことだろうと思います。間違った英語教授法や学習への認識によってたくさんの「英語嫌い学生」を生み出してしまったことは、残念だとしかいいようがありません。英語を教えている教員として、責任も感じますし、この状況を少しでも変えていきたいとも思っています。しかし日本の英語教育は過渡期にあり、多くの問題が存在するため、国全体の英語教育が変わるにはまだまだ時間がかかるでしょう。もちろん、私もみなさん全員の将来に必ず英語が必要とは思いません。学生が私に言ったように、英語を使わなくても生きて行けるし仕事もできるだろうと思います。しかし将来の可能性を狭めてしまっていることもまた事実なのです。

現在、アメリカ人やイギリス人など英語を母語としている人たちの人口はどのくらいだと思いますか。世界人口71億人に対して3億5千人(4.9%)です。皆さんはもっと多いだろうと予測しませんでしたか。同じ質問を学生にするとだいたい20-40%くらいと答えます。しかし4.9%の人たちだけが英語を使って生きているわけではないのです。インドやシンガポールのように英語を公用語、準公用語として使用している国は54カ国あり、母語話者も含めるとその人口は約14億人(20%)です。統計データはありませんが、これに英語を外国語として学習し運用できる人を含めると一体どれだけの人たちが英語を仕事や生活の中で使用しているのでしょうか。またインターネットの情報の約半分、最先端の科学技術雑誌のほとんどが英語で書かれています。

英語ができなければ生きていけないわけではありませんが、国際的なコミュニケーションの手段としての英語の重要性は非常に高いのです。英語を運用できる能力をもつということは、これだけ多くの人や情報にアクセスできるということです。日本の社会の中での限られた情報だけでなく様々な情報や人たちと接することでグローバルな視野を持って、公平な目で物事を判断できる力を養ってほしいと思います。それは皆さんの将来の可能性を確実に広げてくれるからです。