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伝えたいこと2014 Vol.02


『コンフォートゾーン』を打ち破る
鈴木 佳代
学生の皆さんと話していると、「将来何になりたいのかわからない」という声をよく耳にする。自宅と大学の教室、バイト先の3地点を行き来し、見知った顔の社会関係の中で与えられたことをこなす日々を送る学生が多いことにも気づく。彼らに共通しているのは、不快な思いや面倒なことはしたくない、つまり快適な空間・範囲(コンフォートゾーン)から出たくないという思いだ。

私自身も学生時代にはそんな気持ちで日々を過ごしていたように思う。しかし、後になって振り返ってみると、結局自分自身を成長させていたのは、当時は逃げたいくらい嫌だったこと――徹夜で必死にレポートを書きあげたり、意見の相違から人と対立したり、何かの役員をやらされたり、よく知らないオトナと話をしたり――に他ならないことに気付く。

私が担当する授業やゼミでは、あえて学生のコンフォートゾーンを打ち破るような方法を取り入れている。リサーチプロジェクトの小グループや役割は毎回くじ引きで決める。講義科目でも、学生自身が考えたことを文章にしたり、意見を交換したりする時間が3分の1を占める。これは、私が学生に2つの力を着けてほしいと思っているからだ。ひとつは、自分の思いを言葉にし、考えを伝える力。もうひとつは、他者の考えに耳を傾け、多様性に目を向ける力。普段は自己開示が苦手でも、授業を通じて人と意見を交わす面白さに気付いてくれる学生は多い。

「ほかの人が考えていることが自分と違って驚いた」
「結論は同じでも、そこに行きつく考え方が違っていることに気付いた」
「何かこう、思ってることはあるんだけど、言葉にして表すのって難しい」
「自分が思ったことをみんなの前で言えるのって気持ちいい!」
 自分の考えを表現し、他者の考えを聞く練習を重ねる中で、自己を発見し、意見の相違に気付き、客観性を伴う論理的な思考へと発展させる。それはまさに、問題を発見し解決しようとする「政策力」であると私は考えている。

将来何になりたいかを見つけることは、自分に何ができるか、どんなことに充実感や達成感を感じられるかを見極めることでもある。それを見出すには、ただ待っていても埒が明かない。多少の痛みや面倒を覚悟で様々なことにチャレンジし、自分自身で考え、感じるよりほかに、「ひらめきの瞬間」がやってくることはない。どうか、今いるコンフォートゾーンをちょっとだけ飛び出す勇気を持ち、社会に開かれた自己を育てていってほしい。

公開日:2014年11月10日