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伝えたいこと2015 Vol.02


「ドロドロ心理学」への招待
太幡 直也
「社会心理学の研究は、人間の弱さ、不合理さを明らかにするところが面白い」これは、私の恩師の一人である山本眞理子先生がおっしゃっていた言葉である。

社会心理学とは、人間同士の関わり合いの中で生じる心理や行動の法則に着目する、心理学の一分野である。私は、学部生のときに社会心理学の実験の面白さに魅了されて以来、社会心理学に関する研究を続けてきた。
社会心理学を勉強すると、人間はとても弱い存在であることに気づかされる。無意識のうちに、自分の評価を下げないように振る舞うことや、自分自身すらだましてしまうこともある。また、人間は思った以上に合理的ではないことにも直面する。他者を判断するときに、冷静に判断しているつもりでも、先入観や思い込みに基づいて判断していることも多い。人間の弱さ、不合理さを示す例は、数え切れないほど挙げられる。このような、人間の弱さ、不合理さのような、いわばドロドロしたところを明らかにしようとする心理学を、私は「ドロドロ心理学」と呼んでいる。
もちろん、人間には強く、健全な、いわばキラキラしたところもたくさんある。したがって、人間について考えるとき、ドロドロしたところに目を向けて自分の至らなさに直面するよりも、キラキラしたところだけに目を向けていた方が心地よいかもしれない。
しかし、人間のドロドロしたところにこそ、人間の本質が隠されていると感じている。私が、「隠す」という行為に着目し、「嘘や隠し事がバレているかもしれない」という感覚や、自己情報へのプライバシー意識を研究テーマとしてきたのは、「隠す」という行為に、不都合な真実を隠そうとする人間の弱さが表れていると感じたからである。
「人間は弱く、不合理な側面をもつ存在である」そのような前提に立つことが、人間の本質の理解を深めることになるだろう。さらに、私たちの社会をより豊かにするシステムを構築することや、社会問題を解決する糸口を見つけることにもつながると、私は考えている。

「学生が面白い研究をしようと必死に努力するなら、私も一緒に泥まみれになって、もがきながら指導する覚悟がある」山本先生はこのようにもおっしゃっていた。
私も同じ覚悟である。多くの学生が、「ドロドロ心理学」の研究をしたいと、私の研究室の扉を叩いてくれることを切に願う。一緒に泥まみれになろう!

公開日:2015年10月